1987年からはじまったバサーオールスタークラシック。36回の歴史のなかでさまざまなことが起きた。この連載では歴史や裏話など、オールスターにまつわることをさまざまな角度からお伝えしたい。第3回は2011年の霞ヶ浦水系における史上最接戦を振り返る。
text & photographs by Basser
1994年以降、霞ヶ浦・利根川で開催されるようになったオールスタークラシック。31年の歴史のなかでもっとも接戦になったのが2011年大会(11月下旬に開催)だ。
この年は3月に東日本大震災が発生。土浦新港が一時的に使用不能となり、会場を利根川の「水の郷さわら」に移しての開催となった。トーナメントリアは利根川のみ。 史上最接戦の主役を演じたのは吉田秀雄選手、そして小森嗣彦選手だった。
試合初日はオールスターには珍しい荒天。朝から雨が降り続いた。本流消波ブロックを2.5inレッグワームの3/32ozダウンショットリグで攻めるという十八番の釣りを展開した小森選手はリミットメイク(5匹)で3750gをキャッチ。初日4位につけた。
小森「足を止めて粘り切るような展開は今回の僕にはない。マンメイドをガンガン回っていくだけです」
対して吉田選手は本流のハードボトムでシャッド(ISワスプ55)を巻き倒して4690g(5匹)をウエイイン。
吉田「利根川や霞ヶ浦のバスは意外にスレているので、クリアウォーター的な感覚な釣りが通用するかもしれないという感覚があった。動きすぎない、スーッと泳ぐルアーがいいかもしれないと思ってシャッドを選びました。中層引きです」
この時点でふたりの差は940g。しかし、初日に降り続いた雨が差を縮める要素になる。利根川は雨による変化が起きやすい川である。初日終了時点で「明日開催できるかはわからない」というレベルの雨が降り続いていたのだ。
そして迎えた2日目。会場のテント村は水浸しになり、一部のテントは強風で倒壊していた。しかしスロープを見るとランチングは安全に実行できる状況。2日目も予定通り開催されることが決まった。利根川はひと晩で40cm増水していた。
吉田選手にとっては厳しい変化だった。メインにしていた消波ブロックに入ると浮きゴミが多くてシャッドを引けない状況。抑えの場所として頼りにしていた長門川は流れが強すぎて水門でバスボートが押し戻されてしまう。このあと吉田選手は各エリアの水を見て回ることを優先し、開始から2時間をほぼキャストせずに過ごすことになった。
結果的に上流は水が悪いので切り捨て、水の色が初日と大差なかった下流エリアで勝負することを決める。水郷大橋上流の消波ブロック帯を10gダウンショットリグ(スリーピース3in)で探り600gと300gをキャッチ。一度のラインブレイクがあった。その後本命の阿玉川閘門周辺の沈みブロックに入りシャッドを引き倒す。ここで2匹をキャッチするが、50cmアップをジャンプでバラしてしまう。 吉田「あと1匹欲しいと思っていたところ、レンギョを掛けてしまったと思ったら水面でジャンプしたのが50cmオーバーのバスだった。何もできませんでした……。完全に運がなくなったと思って激しく落ち込みました。今のバスをキャッチしていたら……」
しかしその後、心を立て直す意外な出来事が起きる。自分がロストしたISワスプ55を釣りあげたのだ。
吉田「それだけ同じコースをきっちり通せているってことで気持ちを立て直せた。時計を見たらまだ時間があったので『あっ、揃うわ』と言いました」
その後リミットメイクに成功(2870g)。トータルウエイトは7560gだった。
一方の小森選手は2日目も消波ブロックに専念した。レッグワームで2.5〜3mボトムを探り1kgフィッシュを獲ると、2匹目はテトラのエッジでキャッチ(8時52分)。
小森「1匹目は精神的に、2匹目は情報的に貴重な魚。おそらくシャローは終わっている」
本人も感じていたかもしれないが、このときすでに吉田選手を逆転していた。その後9時47分に800gを追加。
勝負が決まったのはこのあとだった。一度テキサスリグとダウンショットで探った消波ブロックをクランクで流し直そうとディープX100を手にすると、ブロックのインサイドの高速リトリーブにバスがもんどり打った。ボート際まで寄せて抜き上げようとするとバスが最後の抵抗を見せ急潜行。ボートがブロックのエッジと接近しており、もたもたしているとラインブレイクの可能性があるため小森選手は強引に抜く判断を下した。しかし、結果的にそれがバラシに繋がってしまう。その10分後、ふたたびクランクで掛けた魚をファイト中にバラしてしまう。まさかの2連続ミスである。このあと意地で4匹目をキャッチするが、リミットメイクには1匹届かず。
それでも3680gは2日目のトップウエイトだった。吉田選手か小森選手か、ウエイインの最後の最後まで誰も勝敗がわからない接戦だったが、結果は130g差で吉田選手の勝ち。「本流のシャッド中層引き」というほかには誰も実行していなかったパターンで優勝を決めた。
一方の小森選手は2011年、TOP50の年間成績を32位というらしくない成績で終えていた。このオールスターがひとつのキッカケになったのか2012年は完全復活。TOP50でAOYを獲得し、オールスターも優勝を決めている。グッドルーザーには必ず順番が回ってくるのだ。